最終更新日:2025.09.08
咳過敏症候群(Cough Hypersensitivity Syndrome, CHS)

咳過敏症候群とは?
咳過敏症候群(CHS)とは、『低レベルの温度刺激、機械的・化学的刺激を契機に生じる難治性の咳を呈する臨床症候群』と定義されており、咳反射を担う気道知覚神経の過敏状態や中枢神経の機能異常が背景病態として考えられています。
症状
- 主症状として咳症状が8週間以上続きます(慢性咳嗽)。
- 「咳の閾値が低下」し通常では反応しない僅かな刺激(タバコなどの煙、香水などの匂い、空気の乾燥、冷気、会話、飲食など)で容易に咳が誘発されることが特徴で、咳を我慢したくても自分では止めらない状態になることもあります。
- 咳症状により日常生活の質を著しく低下させます。
悪化因子
- タバコ煙
- 大気汚染・粉塵
- 香料や化学物質
- 冷気・空気の乾燥
- 飲食(特に酸味・辛味など刺激物)
- 会話・笑い・運動
- 感冒後(ウイルス感染後の気道過敏状態)
- 胃食道逆流症(GERD)や後鼻漏などの併存疾患が咳過敏を助長する場合もある
- 気管支喘息(喘息)の悪化
評価方法
- まずは慢性咳嗽を来たしうる疾患(喘息、咳喘息、逆流性食道炎、COPD・肺気腫、副鼻腔炎、薬剤性咳嗽[ACE阻害薬など]、心不全など)の診断及び治療を行うことが重要です。
- 慢性咳嗽の治療を行っているにも関わらず、「特定の軽微な刺激で咳が誘発される」「咽喉頭部の異常感覚」などの症状が残存する場合は咳過敏症候群を想定します。
必要な検査
- 胸部X線
肺炎、肺癌、結核、間質性肺炎、心不全などの除外 - 呼吸機能検査
喘息や咳喘息との鑑別 - 呼気NO検査
好酸球性気道炎症の有無を評価(喘息・咳喘息に関連) - 喀痰検査
好酸球性気道炎症の評価 - 上部消化管検査
逆流性食道炎が疑われる場合 - 鼻咽頭評価
後鼻漏・副鼻腔炎の評価
治療法
慢性咳嗽の原因疾患があればその治療を優先
喘息、咳喘息、逆流性食道炎、COPD・肺気腫、副鼻腔炎、などの治療で咳が改善する場合があるため、慢性咳嗽の原因疾患の治療を行うことが基本。
薬物療法(感覚過敏に対する治療)
選択的P2X3受容体拮抗薬
気道上皮細胞の障害によって生成されるATPという物質がP2X3受容体に結合することで求心性知覚神経を刺激し、咳を来すことがあります。選択的P2X3受容体拮抗薬は、P2X3受容体に作用しその刺激をブロックすることで、咳症状を抑制します。日本ではゲーファピキサント(リフヌア)が2022年4月に発売となり、難治性慢性咳嗽に対して保険適応となっております。
ニューロモジュレーター
- ガバペンチン、プレガバリン
- 三環系抗うつ薬
- 低用量徐放性モルヒネ
これらは有効性が限定的で、副反応(便秘、嘔気、めまい、複視など)が多くモルヒネ以外は日本では適応外です。
生活指導
禁煙を行う、冷たい冷気・刺激物(香辛料、アルコールなど)を極力避ける、長時間の発声を控えることが重要です。
まとめ
咳過敏症候群は、慢性咳嗽の病態として注目されている新しい概念で、「軽微な刺激で咳が誘発される気道知覚過敏」が特徴です。治療は基礎疾患の治療とともに、新規治療薬(選択的P2X3受容体拮抗薬など)が効果的な場合があります。大阪市西区の『みなみ堀江クリニック』では咳過敏症候群に対しても積極的に治療を行っております。
咳症状でお悩みの患者さまは『みなみ堀江クリニック』へお気軽にご相談ください。