咳喘息とは
咳喘息とは、喘鳴(ゼイゼイ・ヒューヒューいうこと)や痰、息苦しさを伴わず、主に長引く咳のみを症状とする疾患です。適切な治療を行わないと30~40%の方が気管支喘息に移行するとされており、注意が必要です。
夜間や早朝に悪化しやすく、気温の変化やタバコの煙、新型コロナウィルス、インフルエンザウィルス、風邪ウィルスなどの感染症が引き金になることもあります。
また、ダニ、ハウスダスト、花粉などのアレルゲンによって悪化することもあります。
気管支喘息と同様に、吸入ステロイドや気管支拡張薬による治療が中心となります。
咳喘息の主な症状
- 咳だけが長期間続いている
- 喘鳴(ゼイゼイ・ヒューヒュー)や呼吸困難を伴わない
- 夜間・就寝中や朝方に咳がでる
- 気温の変化やタバコの煙、会話、飲酒などが原因で咳が出る
- 新型コロナウィルス、インフルエンザウィルス、風邪により悪化する咳
- 胸部レントゲンでは異常が認められない
咳喘息は初期の段階(咳が出始めの時)では診断が難しく、安易に咳止めを処方されたり、市販の風邪薬や咳止めを購入して飲まれるケースも少なくありませんが、これらの咳止め薬では咳喘息は改善しません。それどころか、安易に咳止めに頼ることで咳の原因が不明になり、原因疾患を見逃すことになりかねません。
咳喘息は気管支喘息と同様に、気道に炎症が起こることで発症します。
そのため、治療は、吸入ステロイドや気管支拡張薬などを用いて気道の炎症を抑えつつ、症状をコントロールしていくことが重要です。
咳喘息の原因ときっかけ
咳喘息は、気道に慢性的な炎症が起こることで発症します。気道の炎症は、好酸球(白血球の1種)によるものが大半をしめます。
この好酸球性気道炎症の有無を、呼気の一酸化窒素の値や血液検査で好酸球数を測定することで判断していきます。
咳喘息は、以下のようなものがきっかけとなって起こります。
- 新型コロナウィルス、インフルエンザウィルス、風邪ウィルスなどの感染症
- ダニ、ハウスダスト、花粉、PM2.5、黄砂、タバコの煙など
- 天候や気温の変化、運動、ストレス、過労
咳喘息と気管支喘息の違い
一般的に、喘息とは「気管支喘息」のことを指し、ゼイゼイ・ヒューヒューといった喘鳴を認め、痰の量が多くなり、発作的な症状を起こすことがあります。
これに対して咳喘息は、喘鳴がなく咳のみを症状とすることが特徴です。
しかし、咳喘息の3~4割程度が気管支喘息へ移行するとされており、適切な治療が必要です。
咳が長引く場合は、呼吸器専門医の診察を受け、治療されることをお勧めします。
咳喘息の診断・検査
長引く咳で喘鳴(ゼイゼイ・ヒューヒュー)や呼吸困難がなく、就寝時や深夜から明け方にかけて悪化しやすく、寒暖差、受動喫煙、会話、低気圧、精神的ストレスが誘引となることが特徴です。気管支拡張薬の効果が認められれば咳喘息の可能性が高まります。
長引く咳を訴えて受診される患者さんは、咳喘息や喘息以外にも、肺炎や肺気腫・COPD、アトピー咳嗽、副鼻腔炎、逆流性食道炎など他の疾患の可能性を考える必要があります。
それらを鑑別するために、初診時には、胸部レントゲンや肺機能検査、呼気NO検査、場合によっては血液検査を追加して診断していきます。
咳喘息の治療
咳喘息は気管支喘息と同様に、気道に炎症が起こることで発症します。そのため、治療は気管支喘息と同様に、吸入ステロイドで気道の炎症を抑えつつ、気管支拡張薬を併用することで症状の改善を目指します。
吸入ステロイド
咳喘息は気道の炎症が原因になっていることから、気管支喘息と同様に吸入ステロイドを使用します。ステロイドには強力な抗炎症作用があり、このステロイドを吸入することで気道の炎症を抑えます。
ステロイドと聞いて副作用を心配される方もおられるかもしれませんが、喘息治療に用いる吸入ステロイドは主に気道に作用し、全身への影響は軽微とされています。ただし、吸入後に「うがい」をすることで口腔内や喉に付着したステロイドを取り除き、口腔内カンジタを予防することが必要です。
気管支拡張薬
LABA(長時間作用性β2刺激薬)やLAMA(長時間作用性抗コリン薬)などの薬剤を使って気道を拡張させて咳の症状を抑えます。
現在の喘息治療は、吸入ステロイドと気管支拡張薬の合剤が主流となっています。
生活習慣の改善
上記の薬の治療以外にも、生活の中で咳喘息のきっかけとなるような以下のことに気を付けることも大切です。
- 禁煙や受動喫煙を避ける ※当院では禁煙外来も行っており、禁煙をサポートいたします。
- ほこりやダニ、花粉など原因となっているアレルゲンを除去するために掃除をこまめに行う
- アルコールはその代謝産物であるアセトアルデヒドが喘息を悪化させるため、少なくとも咳症状が出ている期間は飲酒を控える
咳喘息の繰り返しは気管支喘息に移行します
咳喘息は、治療期間が短いと、再発したり気管支喘息に移行してしまう可能性があります。
その場合、咳喘息の原因は気道アレルギーによって気道が過敏になることと考えられているので、ほこりやダニ、花粉、カビ、ペットの毛など吸入アレルゲンを調べ、アレルゲンを回避する取り組みが大切になってきます。
ダニやスギ花粉によるアレルギー性鼻炎が合併している場合は、舌下免疫療法を行うことで、咳喘息や気管支喘息のコントロールを得やすいとされています。
3週間以上咳が続いている場合は(特に夜間〜朝方にかけて)、咳喘息や気管支喘息が背景に潜んでいる可能性があります。安易に咳止めに頼ることで、咳の原因が不明になり、原因疾患を見逃すことになりかねません。咳が長引く場合は、早めに呼吸器科を受診して適切な検査と治療を受けることが大切です。
長引く咳でお悩みでしたら、みなみ堀江クリニックへお気軽にご相談ください。