喘息診療における個別化医療について

Disease description

喘息診療における個別化医療

疾患名が入ります疾患名が入ります

最終更新日:2024.12.16

喘息診療における個別化医療 〜Treatable Traits〜

喘息診療における個別化医療 〜Treatable Traits〜のイメージ画像

はじめに

喘息(気管支喘息)は、気道の慢性的な炎症が特徴の疾患であり、気管支が過敏になり、様々な刺激(ウィルス、花粉、タバコの煙、ペットの毛、寒暖差など)に対して過剰な反応を示すことで発作的な呼吸困難や咳嗽(がいそう)、喘鳴(ぜんめい: ヒューヒュー、ゼイゼイ)を引き起こします。喘息は小児のみならず成人でも発症し、日本人口の約8%が喘息を有病しているとされております1)

喘息を無治療のまま放置してしまうと、重度の発作(喘息発作)のため入院加療が必要となってしまい(死に至ることもあります)、日常生活の制限(呼吸困難や日中・夜間の咳嗽のため)を来します。

そのため、喘息治療は呼吸器専門医やアレルギー専門医による適切な治療が必要と考えます。また、近年、喘息治療においても、他の疾患同様に個別化医療の重要性が認識されてきております。

なぜ個別化医療が必要なのか?

喘息の病態は非常に多様であり、一人ひとりの喘息患者さまに対して適切なアプローチが必要とされています。

つまり、喘息治療は喘息患者さまの症状に応じた個別化医療を行うことが重要であり、『Treatable Traits』に基づいた治療を実践する必要があります2-4)

Treatable Traits』とは、喘息に関連する治療可能な特定の形質・因子・特徴を抽出し、それらに対して治療を行うことで、治療選択薬の最適化を目指すことです。

Treatable Traits』に基づいた治療を実践することで、喘息患者さまの喘息症状を改善し、喘息管理を容易にすることが期待できます。

主なTreatable Traits

気道過敏性

アレルゲンや刺激物(タバコ、アルコール、香水、化学薬品など)に対して気道が過敏に反応し、喘息症状の悪化につながるため、それらを可能な限り避けることが重要です。場合によっては薬物治療を追加することがあります。

アレルゲンの特定

アレルギー性喘息に関連するアレルゲンの特定や(アレルギー検査)、アレルゲン免疫療法(舌下免疫療法: ダニとスギ花粉に対して保険適応)が効果的な場合があります。

肥満

肥満は喘息症状を悪化させ喘息コントロールが困難となるケースがあるため、体重管理や生活習慣の改善が重要です。

副鼻腔炎(蓄膿症)

喘息患者さまは副鼻腔炎(蓄膿症)を併発している場合も多く、副鼻腔炎による後鼻漏(鼻から喉に膿が垂れ込んでくる症状)は、気管支喘息を悪化させます。副鼻腔炎(蓄膿症)を同時に治療することが重要です。

喘息発作のトリガー

感染症(ウイルス感染、細菌感染)、環境因子(煙、化学物質など)、心理的・肉体的ストレスなどが喘息発作を引き起こします。これらのトリガーを特定し、適切に予防・管理することが重要です。

好酸球性気道炎症

喘息では好酸球(白血球の1)による気道炎症が主体であるとされています。喘息治療では吸入ステロイド薬によって好酸球気道炎症を抑えることが基本となります。重症喘息の場合は、経口ステロイド薬や生物学的製剤(IL-5抗体、抗IL-5受容体抗体、抗IL-4/13受容体抗体など)を用いて治療を行います。

まとめ

Treatable Traits』による喘息治療アプローチは、喘息患者さまの個別化医療を目的とし、喘息患者さまの喘息症状を改善させ、喘息管理を容易にすることが期待できます。

喘息治療においては、単なる喘息症状(咳、痰、呼吸困難、ヒューヒュー、ゼイゼイ)の管理だけでなく、これら『Treatable Traits』を理解した上で、適切に喘息治療にアプローチすること重要です。『Treatable Traits』による喘息治療アプローチにより、喘息患者さまの予後を改善させ、日々の生活の質が改善されることが期待されます。

当院では、呼吸器専門医が喘息患者さまに対して、『Treatable Traits』に基づいた適切な喘息治療咳診療を行っております。

喘息症状でお困りの患者さま、咳症状でお困りの患者さまは、ぜひ当院へお越しください

 

  1. 平成26年 厚生労働省人口動態統計
  2. Agusti A et al: Am J Respir Crit Care Med 2011; 184(5), 507-513
  3. Agusti A et al: Am J Respir Crit Care Med 2015; 191(4), 391-401
  4. Jameson JL et al: N Engl J Med 2015; 372(23), 2229-2234  
呼吸器科・アレルギー科の一覧に戻る

pagetop