重症喘息について

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重症喘息について

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最終更新日:2024.12.15

『重症喘息』とは? 〜喘息は適切な治療を行われなければ重症喘息に移行する可能性があります〜

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喘息は適切な治療を行われなければ重症喘息に移行する可能性があります。

重症喘息とは?

重症喘息(じゅうしょうぜんそく)は、喘息の中でも難治性の病態であり、ガイドラインに基づいた標準治療を行ってもコントロールが不良の喘息のことです。

具体的には「高用量の吸入ステロイドおよび長時間作用性気管支拡張薬に加えて、ロイコトリエン受容体拮抗薬や長時間作用性抗コリン薬、ステロイド内服、生物学的製剤を要する喘息、またはこれらの治療でもコントロールが難しい喘息」と定義されています。

また、肥満、職業でのアレルゲンへの暴露、喫煙(たばこ)、インフルエンザウィルス、新型コロナウイルス、風邪ウィルスなどによる気道感染症との関連性が指摘されています1)

疫学

喘息患者は日本では1000万人程度とされていますが、そのうちの5-10%が重症喘息であると推定されています2,3)

死亡・増悪リスク

重症喘息患者は一般喘息患者と比べて、死亡リスクが高く、喘息増悪リスクが高いことがわかっています。

喘息治療は、適切に行われなければ重症喘息へ移行してしまう可能性もあり、喘息治療を専門とする医師のもとで適切な治療を受けていただくことが重要と考えられます4-7)

症状

重症喘息では以下のような喘息症状が強くでてきます。

  • 持続的な喘鳴(ぜんめい)、ヒューヒュー、ゼイゼイ
  • 呼吸困難(特に運動時や夜間に悪化)
  • 咳嗽(特に夜間や早朝に多く、睡眠障害を来します)
  • 胸部の圧迫感、息苦しさ

診断に重要なこと

病歴の聴取:喘息の発症時期、経過、治療歴、家族歴などを把握します。

身体診察:呼吸音の異常、発作時の状態などを確認します。

胸部画像検査:胸部レントゲンや胸部CTで肺炎や肺癌、結核、気胸、心不全などの他の疾患の有無を確認します。

呼吸機能検査:スパイロメトリーを用いて、肺機能や気流制限の程度を測定します。特にFEV1%(1秒率)の測定が重要です。

血液検査:喘息は好酸球性気道炎症の可能性が高く、好酸球数の測定や環境アレルゲンの特定のためアレルギー検査を行います。

喘息トリガーの特定:アレルギー検査や環境要因の評価を行い、症状を悪化させる要因を特定します。

重症喘息と判断する前に

  • 重症喘息と診断する前に、下記の内容を確認していくことが重要です。
  • 吸入の方法が正しいか?
  • 正しく毎日欠かさずに吸入をできているか?
  • 他の疾患の可能性はないか?
  • 副鼻腔炎、逆流性食道炎、心不全、睡眠時無呼吸症候群などの併存疾患が適切に治療されているか?
  • アレルゲン(ペット、職業で取り扱っている刺激性物質)への継続的な暴露はないか?

 上記の内容を確認し、咳の原因(本当に喘息か?)、喘息の悪化要因などつきつめることが重要です。

治療

高用量の吸入ステロイド薬と長時間作用性気管支拡張薬に加え、ロイコトリエン受容体拮抗薬や長時間作用性抗コリン薬を上乗せします。

これらでも喘息症状(咳、息切れ、息苦しさ、呼吸困難、喀痰など)の改善が得られない場合は、ステロイド内服を行います。

しかし、ステロイド内服に関しては、長期投与により様々な副作用(糖尿病、高血圧、易感染性、骨粗鬆症など)の懸念があるため、近年は生物学的製剤(注射薬)を早期の段階で導入し(ステロイド内服を減量でき、喘息症状の緩和が期待できます)、ステロイド長期内服を避けることが重要と考えられています。

重症喘息の治療で使用できる生物学的製剤には、抗IgE抗体(オマリズマブ)、抗IL-5抗体(メポリズマブ)、抗IL-5受容体抗体(ベンラリズマブ)、抗IL-4/IL-13受容体抗(デュピルマブ)、抗TSLP抗体(テゼペルマブ)があります。

まとめ

当院では、咳の診療喘息治療に力を入れております。

喘息の中でも、重症喘息は、治療が難しい病態であり、早期の診断と適切な治療が治療成績を向上させる要因となり、患者さま個々の状態に応じた個別化された治療が重要です。

当院では、生物学的製剤を用いた重症喘息患者さまの診療実績も豊富です。

咳でお困りの患者さま、喘息でお困りの患者さまは当院を受診頂けましたら幸いです。

  1. Wenzel S: Clin Exp Allergy 2012; 42(5), 650-658
  2. 平成26年 厚生労働省人口動態統計
  3. Chung KF, Wenzel SE, Brozek JL, et al: Eur Respir J 2014; 43, 343-373
  4. Siddiqui S et al: Semin Respir Crit Care Med 2012; 33(6), 666-684
  5. Omachi TA et al: Ann Allergy Asthma Immunol 2008; 101(2), 130-136
  6. Kupczyk M et al: Clin Exp Allergy 2014; 44(2), 212-221
  7. Miller MK et al: Respir Med 2007; 101(3), 481-489  
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