高齢者喘息とは
世界保健機関(WHO)の定義によると、65歳以上で喘息に罹患している患者を高齢者喘息としています。
高齢者喘息の問題点としては、咳、痰、息切れ、息苦しさなど症状が乏しいことが多く診断が遅れること、併存疾患の存在(COPD/肺気腫、肺癌、逆流性食道炎、心不全、貧血など)、認知機能の低下による受診の遅れなどが挙げられます。
高齢者喘息の疫学
日本において、喘息で命を落とされる方の人数は年々減少してきておりますが、依然として毎年1,000名以上の方が喘息で命を落とされています (厚生労働省の統計よると2021年の喘息による死亡者数は1,038人)。また、死亡者の90%以上は高齢者であることがわかっており、高齢者の喘息を的確に診断し、治療することで喘息による死亡者数をへらすことが重要であると考えられています。
診断
診断に関しては、通常の喘息診療と同じで、問診、聴診、胸部レントゲン、呼吸機能検査、血液検査などを組み合わせて行います。
ここで注意すべきは、高齢者の喘息患者さんは、COPD/肺気腫、肺癌、逆流性食道炎、心不全、貧血などの併存疾患が多いため、それらを見逃さないように、心電図や心臓の超音波検査、胸部CTの確認を行うこともあります。
治療
治療に関しては、通常の喘息治療と同じく、気道の炎症を抑えるための吸入ステロイドが第一選択となります。しかし、高齢者では筋力の低下や認知機能の低下のため、吸入機器(デバイス)によっては吸入手技がうまく行えないため、吸入機器の選択がより重要になります。
まとめ
高齢者の喘息患者さんは、症状が乏しく、診断・治療の遅れから命を落とされる方も多くいらっしゃいます。
正しく診断し、治療を行えば、日々の症状(咳、痰、息切れ、息苦しさなど)が改善するのみならず、喘息死のリスクを低減できます。
咳、痰、息切れ、息苦しさなどを自覚されている方は、呼吸器専門医による診察を受けていただくことをお勧めします。
当院では、あらゆる呼吸器症状に対して、呼吸器専門医が適切な診療を行いますので、ご相談頂けましたら幸いです。