最終更新日:2025.09.16
生活習慣病の代表疾患『高血圧』とは?治療方と生活改善を徹底解説しました。

高血圧とは何か、放置すると危険?
高血圧は「サイレントキラー」とも呼ばれる生活習慣病の代表格であり、症状が表に出にくいため、本人が気づかないまま進行することが多い疾患です。
一般的に、血圧とは心臓が血液を押し出す際に血管にかかる圧力を指します。
これが継続的に高い状態を「高血圧」と呼び、具体的には複数回の測定で、診察室での血圧が収縮期(SBP)140mmHg以上、もしくは拡張期(DBP)90mmHg以上、家庭での血圧が収縮期(SBP)135mmHg以上、もしくは拡張期(DBP)85mmHg以上であれば高血圧と診断されます。
血圧上昇が動脈硬化や臓器障害(脳・心臓・腎臓など)のリスクを増大させる点が臨床的に重要です。
診断基準
日本高血圧学会(JSH 2019)による成人の基準:
- 診察室血圧
収縮期血圧(SBP)≧140 mmHg または 拡張期血圧(DBP)≧90 mmHg - 家庭血圧
SBP ≧135 mmHg または DBP ≧85 mmHg
血圧が高い状態が続くと、血管に過剰な負荷がかかり、血管の壁が厚く硬くなる「動脈硬化」が進行します。これにより脳卒中や心筋梗塞などの命に関わる病気のリスクが高まるのです。
高血圧の原因はさまざまですが、代表的なのは生活習慣に由来する要因です。たとえば、塩分の多い食事、運動不足、肥満、喫煙、過度な飲酒、ストレス、そして遺伝的な体質などが関与します。これらが複雑に絡み合うことで、高血圧に繋がることになります。
さらに、日本人は塩分摂取量が多い傾向にあり、これが高血圧患者の増加の一因になっています。また喫煙者、肥満体質、高齢者の方は高血圧になりやいとされています。
50歳以上の高血圧の割合は、男性では50代で約39%、女性では約20%と報告されていますが、年齢が上がるほど割合は増加し、60代ではさらに高い数値となります。
にもかかわらず、治療を受けていない、あるいは途中で薬をやめてしまっている人も少なくありません。
高血圧が引き起こす疾患とそのメカニズム
血圧が高い状態が長く続くことで、全身の血管に負担がかかり、さまざまな臓器の機能が徐々に損なわれていきます。
特に影響を受けやすいのが、脳の血管、心臓の血管、腎臓、目の血管などです。
ここでは、それぞれの臓器がどのような病気になりやすいか、どのようなメカニズムで進行するのかをわかりやすく紹介します。
脳疾患
高血圧が続くことで脳の血管が硬くなり(動脈硬化)、脆弱になることで「脳出血」や「脳梗塞」のリスクが上がります。
これらは「脳卒中」と総称され、突然麻痺や言語障害、意識障害などを引き起こし、後遺症を残し日常生活に多大なる影響を来します。
動脈硬化が進行するとこれらの脳血管障害に繋がる可能性があり注意が必要です。
心疾患
心臓を栄養している血管(冠動脈)に動脈硬化を来すと、「狭心症」「心筋梗塞」といった命に関わる重篤な疾患へと進行する可能性があります。
また、高血圧では心臓に常に高い圧力の血液を送り出させているため、心肥大(心臓の筋肉が肥大すること)を来たします。
この状態が続くと、心臓の機能低下である心不全につながる可能性があります。
腎疾患
腎臓は血液の老廃物をろ過する臓器ですが、微細な血管の集まりでもあるため、高血圧によるダメージが蓄積しやすい場所です。
腎臓の機能が低下すると、老廃物をうまく排出できず、「慢性腎不全」へとつながります。
進行すると人工透析が必要になることもあり、生活の質が大きく低下してしまいます。
眼疾患
高血圧によって目の奥の「網膜」にある細い血管が障害を受け、「高血圧性網膜症」に繋がる可能性があります。
初期は自覚症状がないものの、進行すると視力低下や視野の異常などが現れ、網膜動脈閉塞症、網膜静脈閉塞症、網膜剥離などの重篤な症状を引き起こすこともあります。
特に糖尿病、慢性腎臓病などの疾患を合併している場合は、より注意が必要です。
これらすべてに共通するのは、高血圧による動脈硬化よって引き起こされる疾患であるという点です。つまり、高血圧は"血管病"と考えると理解しやすく、目に見えないところで静かに体を蝕んでいく疾患だと言えます。血圧が高いだけでは、自覚症状も乏しく受診する必要はないと思われがちですが、高血圧に起因するこれらの疾患を予防するためにも早めの受診をおすすめします。
大阪市西区の『みなみ堀江クリニック』では高血圧を含めた生活習慣病の診療も積極的に行っております。
高血圧の治療
高血圧の治療は、主に「生活習慣の改善」と「薬物療法」の2本柱で進められます。これらは、患者さんの年齢、合併症の有無、生活背景などによって変わります。
重要なのは、高血圧は慢性疾患であるという認識です。一時的に血圧が下がっても、生活習慣や体質の影響でまた上昇する可能性が高いため、生活習慣の改善のみで血圧のコントロールが難しい場合は、薬剤によるコントロールが必要になります。
特に脳卒中や心筋梗塞の既往がある方、糖尿病・慢性腎臓病を合併している方では、降圧薬などの薬物治療を併せて行うことが重要です。
降圧目標【75歳未満の成人】
- 【患者群】
脳血管障害
冠動脈疾患
慢性腎臓病(蛋白尿あり)
糖尿病
抗血栓薬服用中 - 【診察室血圧】
< 130 / 80 mmHg - 【家庭血圧】
< 125 / 75 mmHg
降圧目標【高齢者(75歳以上)】
- 【患者群】
脳血管障害
慢性腎臓病(蛋白尿なし) - 【診察室血圧】
< 140 / 90 mmHg - 【家庭血圧】
< 135 / 85 mmHg
生活習慣の改善(非薬物療法)
すべての高血圧治療の基本となります。
- 食塩制限(6g/日未満)
- 野菜・果物摂取の推奨、飽和脂肪酸・コレステロールの摂取制限
- 適正体重の維持(BMI :25未満)
- 適度な運動(有酸素運動:毎日30分または180分/週以上を行う)
- 節酒(エタノール 男性20-30ml/日以下、女性10-20ml/日以下)
- 禁煙
薬物療法
主な薬剤:
- カルシウム拮抗薬
- ARB/ACE阻害薬
- サイアザイド系利尿薬
- β遮断薬
※合併症(糖尿病、腎疾患、虚血性心疾患、心不全、脳血管障害など)に応じて薬剤を選択。
高血圧の薬には、カルシウム拮抗薬、ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)、ACE阻害薬、サイアザイド系利尿薬、β遮断薬などがあります。それぞれに作用の特徴と副作用があるため、患者さんの体質や併存疾患に応じて選択されます。
薬を飲み始めた患者さんからよく聞かれるのが、「この薬は一生飲み続けなければいけないの?」という疑問です。実際には、生活習慣の改善に取り組むことで減薬や中止が可能になるケースもあります。
たとえば減塩や適正体重の維持、定期的な運動によって血圧が安定すれば、医師と相談して薬の量を調整することができるのです。
ただし、薬を急にやめると血圧が急上昇し、脳卒中などのリスクが高まる可能性があります。そのため、薬の中止は自己判断ではなく医師との連携のもとで慎重に行うべきです。
昨今、服薬の負担を減らすために、2種類の薬剤を1錠にまとめた「配合剤」も登場しています。これにより服薬回数が減り、飲み忘れの予防にもつながります。また、家庭用血圧計による日々の測定を継続することで、患者さん自身が血圧の変化を実感しやすくなるため、治療意欲の向上にもつながります。
生活上の注意点
- 定期的な血圧測定・記録(家庭血圧は治療方針を決める上で重要なデータです)。
- 塩分・アルコール制限、野菜摂取などバランスの良い食事。
- 規則正しい生活、十分な睡眠。
- ストレス管理(リラクゼーション、趣味を楽しむ)。
- 定期的な診察・検査で合併症を未然に防ぐ。
- 薬の自己中断は危険です。
まとめ
高血圧症は「サイレントキラー」と呼ばれるほど自覚症状が乏しいまま進行し、脳卒中・心疾患、慢性腎臓病などのリスクを高めるためるため、早期発見および生活習慣の改善・必要に応じた薬物療法が重要です。
大阪市西区の『みなみ堀江クリニック』では、「薬を減らしたい」という患者さんの希望も尊重しながら治療を行っております。健康寿命を延長するために、当院で一緒に高血圧治療に取り組んでいきましょう。
高血圧に関してよくあるご質問
血圧の薬は一度飲み始めたら一生続ける必要がありますか?
必ずしもそうではありません。
生活習慣の改善によって血圧が安定すれば、医師と相談のうえ減薬や中止も可能です。
ただし、自己判断は危険ですので、必ず医師に相談の上で連携して進めましょう。
血圧が下がったら、薬をやめても大丈夫ですか?
薬を急にやめると脳卒中などのリスクが高まる可能性があります。医師と相談の上、治療方針を決めることが重要です。
どのくらいの頻度で通院すればいいですか?
状態によりますが、安定するまでは月1回の診察が目安です。血圧が安定していれば2〜3ヶ月に1回に延長可能です。
血圧を下げるために、食事はどうすればいいですか?
減塩が基本です。具体的には、1日6g未満が理想です。
また、野菜や果物を積極的に摂取し、飽和脂肪酸・コレステロール(肉類などの動物性脂肪)の摂取を控えることも大切です。禁煙も非常に重要です。
血圧が高くても症状がないのですが、治療する必要はありますか?
高血圧は"サイレントキラー"と呼ばれている通り、症状がないまま進行し、突然脳卒中や心筋梗塞などを引き起こすことがあります。医師と相談して適切な治療を継続しましょう。
薬に頼らずに血圧を下げる方法はありますか?
生活習慣の改善が大きな鍵です。運動、減塩、体重管理、禁煙・節酒などを継続することで血圧のコントロールが良好となります。
寝ているときに『いびき』が気になるのですが、高血圧と関係がありますか?
睡眠時無呼吸症候群が合併している可能性がありますので、医師の診察を受けていただくことをお勧めします。